特定技能・宿泊を取得するには?【詳細版】

この記事は

・日本の宿泊分野はどのような現状なのか?
・特定技能・宿泊分野ではどのような仕事を対象としているのか?
・このビザで働くにはどのような条件(試験)があるのか?

という疑問を持たれている方、特定技能・宿泊の概要をサクッと理解したい方に向けた解説記事となっています。
(この記事は2020年8月20日に公開されました)

現状

宿泊業というものは主に観光産業に影響を受けるので、観光について国内・国外に分類して見てみたいと思います。
以下のグラフは日本人の国内旅行における消費額の推移です。

出所:観光庁「旅行・観光消費動向調査」

青色部分が宿泊旅行なのですが、2011年から2019年にかけて約1.2%増加していることがわかります。

以下のグラフは、1964年から2019年にかけての訪日外国人数の推移です。

2010年頃から急速に訪日外国人が増加していることがわかります。

つまり、日本における観光業は、国内・国外ともに拡大し続けているということがいえます。これは同時に宿泊施設の利用増加、宿泊業の需要増加を意味します。

そして、人口減少が進歩している日本においては人材確保は容易なことではありません。
政府は対策として、業務効率化の向上や労働環境改善として女性・高齢者支援のための制度導入などを行っています。しかし、それでも現時点で既に約3万人の人手不足であり、2023年までには約10万人もの人手不足が生じると見込んでいます。

特定技能とは?

簡潔にまとめると、特定技能とは「一定の専門性・技能を持ち、即戦力となる外国人を受け入れることにより人手不足解消を目的とする就労ビザ」のことで、2019年4月から開始しました。

そのため、受入れ業種は国内の人材確保の取組をしてもなお、人材が足りないと予測される業種に限定されています。下表が特定技能受入れ対象分野です。

介護 ビルクリーニング 素形材産業 建設
航空 電気・電子情報関連産業 造船・舶用工業 宿泊
農業 自動車整備 漁業 飲食料品製造業
外食業 産業機械製造業

特定技能も、技能実習制度と同様に「特定技能1号」と「特定技能2号」という区分があります。

在留期間は、1号の場合通算で上限5年まで、2号なら上限がありません。ですが、特定技能2号の受入れ対象業種は建設と造船・舶用工業のみです。そのため、宿泊は特定技能1号しかありません。

仕事内容は?

特定技能・宿泊の対象としている仕事内容は、宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に関する業務です。

また、それらに加えて日本人が通常行う土産物等の売店における販売業務や、施設内備品の点検・交換等の関連業務も従事する業務の対象としています。
特定技能・ビルクリーニングの記事でも記載したようにホテルなどにおけるベッドメイキング・清掃作業は特定技能・ビルクリーニングの仕事です。そのため、これらの仕事は特定技能・宿泊の関連業務、付随的な業務に相当します。

特定技能・宿泊の方が働くことのできる施設は旅館業を行っている施設なので、接待を伴う業務は行うことができません。それに加え、簡易宿所(ペンション、民宿、ゲストハウス、カプセルホテルなど)やラブホテルでの就労は認められていません

取得条件

特定技能1号・宿泊を取得するのに求められる条件は概ね以下の通りです。

・18歳以上
・宿泊業技能測定試験に合格
・日本語能力試験(N4以上)に合格

*特定技能を取得するための他の条件はコチラの記事で解説したので、ここにある条件は一部省略したものです。

また、特定技能1号を取得するには上記した試験に合格する方法と、技能実習2号から移行する方法があります。(技能実習制度とは?
その場合、日本語能力試験に関しては、どの分野の技能実習生であっても技能実習2号を修了していれば免除の対象になります。ですが、技能試験に関しては、宿泊の職種に従事した技能実習生のみが免除の対象になります。

どのような試験が行われるのか?

日本語能力に関するもの

1号特定技能外国人には「ある程度の日常会話ができることに加え、業務上必要な日本語能力」を有することが求められます。
宿泊分野において合格すべき試験は1つだけです。それが「日本語能力試験または国際交流基金日本語テスト」です。
日本語能力試験ならば、N4合格の日本語レベルが必要です。N4は日本語能力試験の5段階中下から2番目のレベルです。
国際交流基金日本語テストにおいてN4に匹敵する日本語レベルは6段階中下から2番目のA2に該当します。

日本語能力試験HPはコチラ
国際交流基金日本語基礎テストHPはコチラ
技能水準に関するもの

先ほども述べた通り、技能水準を測る試験は宿泊業技能測定試験です。この試験は、宿泊業において必要とされる「フロント業務」「広報・企画業務」「接客業務」「レストランサービス業務」「安全衛生その他基礎知識」の5つのカテゴリーで構成されており、30問あります。

以下に2019年に行われた第1回の試験の一部を載せています。

 

また、これらの筆記試験に加えて、実技試験も実施されます。この試験では、現場を想定した実際の対応能力が求められます。

過去問の全問はコチラから

どれくらいの特定技能生が働いているのか?

2019年から始まった特定技能制度ですが、政府はそれぞれの分野での5年間の受入れ見込み人数を発表しています。そして宿泊分野では受入れ見込み人数を22,000人としています。

では、実際にどれくらいの特定技能生がいるのでしょうか?以下のグラフは令和元年6月から令和2年6月までの特定技能生の推移です。

出入国在留管理庁より作成

宿泊分野における特定技能生数は、受入れ見込み人数(22,000人)を考慮すると令和2年6月時点で39人しかいないことから、著しく差があることがわかります。

実は、技能実習2号の対象職種に宿泊(接客・衛生管理)が追加されたのは、2020年2月25日と比較的最近の出来事です。そのため、それまでは試験に合格する以外に特定技能・宿泊の在留資格を取得する方法がありませんでした。
それに加え、2020年冬春頃から蔓延してきた新型コロナウイルスの影響で4月頃に実施予定であった試験が7月に延期されたこともあり、思うように特定技能生を確保することができていないのが現状です。

技能実習生1号から特定技能に移行するには3年の月日を要するので、この改正がどれほど特定技能生数を後押しするか期待がかかります。(技能実習制度とは?

まとめ

・国内・国外ともに旅行者は増加しているため、宿泊業の需要は増加している
・フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等が主な仕事内容
・試験は上の4項目+安全衛生その他基礎知識についての筆記試験と実技試験
・宿泊分野における特定技能生数は見込み人数や需要人数を考慮してもまだまだ不足している

宿泊業は観光産業との関連が強い産業のひとつです。そして、観光客数が増加していること、開催されるであろう東京オリンピックが控えていることを鑑みても宿泊分野における人材確保というのは日本にとって非常に大切なものと考えられます。

しかし、宿泊業は新型コロナウイルスの影響を最も大きく受けた分野のひとつでもあり、その影響は長期間にわたって続くと考えられています。実際に、多くの宿泊施設で売上が減少しています。
日本政府がGo Toトラベル キャンペーンを打ち出したのも、それほどに宿泊・観光業に対する経済的ダメージが大きかったためです。

そのような現状に置かれている宿泊業界について、特定技能について、少しでも理解を深めて頂ければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。