特定技能・農業を取得するには?【詳細版】

この記事は

・日本の農業の現状はどうなっているのか?
・このビザで働く人はどのような条件(試験等)を満たした人なのか?
・どのような仕事内容を行うことができる(対象としている)のか?

という疑問を持たれている方、特定技能・農業の概要をサクッと理解したい方に向けた解説記事となっています。
(この記事は2020年8月8日に公開されました)

農業分野の現状

少子高齢化が進む日本において、農業分野における人手不足は深刻なものです。
以下のグラフは農耕、畜産における平成24年から令和元年までの有効求人倍率の推移です。
*有効求人倍率=有効求人数÷有効求職者数

農業のなかでも養畜業では平成27年から有効求人倍率が2.0を下回ることなく上昇し続け、平成30年には3.11になるなど人手不足の深刻さがわかります。

また、農業就業者は65歳以上の方が多く、全体の農業事業者の7割近くを占めており、49歳以下は1割程度です。少子高齢化の進行スピードは都市部と農村部で大きく異なっているため、農村地域ではより一層この人手不足の問題は深刻です。

そのためにも、即戦力となる外国人労働者である特定技能生の受入れを行うことはこの問題に対する有効な手段のひとつといえます。

特定技能とは?

簡潔にまとめると、特定技能とは「一定の専門性・技能を持ち、即戦力となる外国人を受け入れることにより人手不足解消を目的とする就労ビザ」のことで、2019年4月から開始しました。

そのため、受入れ業種は国内の人材確保の取組をしてもなお、人材が足りないと予測される業種に限定されています。下表が特定技能受入れ対象業種です。

介護 ビルクリーニング 素形材産業 建設
航空 電気・電子情報関連産業 造船・舶用工業 宿泊
農業 自動車整備 漁業 飲食料品製造業
外食業 産業機械製造業

 

特定技能も、技能実習制度と同様に「特定技能1号」と「特定技能2号」という区分があります。

在留期間は、1号の場合通算で上限5年まで、2号なら上限がありません。ですが、特定技能2号の受入れ対象業種は建設と造船・舶用工業のみです。なので、農業は特定技能1号しかありません。

具体的な仕事内容は?

一言に「農業」といってもこの特定技能においては農業を耕種(こうしゅ)農業畜産農業の2つに分類しています。

耕種農業というのは、主に田畑を耕して作物を栽培するもので、稲作や畑作、穀物、野菜などの栽培がこれにあたります。

一方で、畜産農業は主に豚や牛、鶏、馬などの飼育・生産に加え、乳牛から牛乳を搾り、乳製品を作る酪農などがこれにあたります。

この耕種農業と畜産農業は共に農業分野ですが、必要な知識などが異なるためそれぞれに対して試験があります。(後述)

また、どちらの場合においても日本人が通常行う関連業務(農畜産物の製造・加工、販売の作業、冬場の除雪作業など)も特定技能生が行う業務に含むものとしています。

特定技能・農業の取得条件

特定技能・農業を取得するのに求められる条件は概ね以下の通りです。

・18歳以上
・農業技能測定試験(耕種農業全般もしくは畜産農業全般)に合格
・日本語能力試験(N4以上)に合格

*特定技能を取得するための他の条件はコチラの記事で解説したので、ここにある条件は一部省略したものです。

また、特定技能1号を取得するには上記した試験に合格する方法と、技能実習2号から移行する方法があります。その場合、試験が免除されますが次に示す注意が必要です。(技能実習とは?

(注)日本語能力試験はどの分野の技能実習生であっても免除対象
になりますが、農業技能測定試験は以下の職種・作業に従事した技能実習生が免除対象になります。

取得する業務区分 職種 作業
耕種農業全般 耕種農業 施設園芸
畑作野菜
果樹
畜産農業全般 畜産農業 養豚
養鶏
酪農

どのような試験が行われるのか?

耕種農業の試験問題では、耕種農業を行うために必要な知識、つまり植物に関する一般的な知識や土、肥料、栽培・収穫方法などに関する耕種農業一般などがあります。

他には安全衛生や稲作作業、畑作・野菜作業、施設園芸作業、果樹栽培作業、農作業の用語といった項目があります。

より細かい内容はこちらから確認できます。

 

畜産農業では、大項目が3つあります。

1つ目の「畜産の特徴」では酪農、牛肉生産、養豚、養鶏についての内容が書かれています。

2つ目の「家畜と飼育に関する基礎知識」では乳用牛、肉用牛、豚、養鶏についての内容が書かれています。

3つ目の「日常の家畜の管理作業」では農場の衛生管理・安全管理、乳用牛、肉用牛、養鶏についての内容が書かれています。

より細かい内容はこちらから確認できます。

どれくらいの特定技能生が働いているのか?

冒頭で農業分野における人手不足の現状について触れましたが、実際のところ外国人労働者である特定技能生はどれくらい活躍しているのでしょうか?予想されている人手不足を解消できるほど多いのでしょうか?

以下のグラフが特定技能1号在留外国人の推移です。


出入国在留管理庁より作成

前半部分で少し記載した通り、この特定技能制度は2019年(令和元年)4月から開始されたということもあり、6月時点ではわずか2人でした。その後31人、292人、686人と数が増えてきました。

しかし、法務省が発表した5年間(2019年~2024年)での受入れ見込み数は農業分野は36,500人でした。特定技能制度が開始してから1年が経過しましたが、未だ686人しか受入れることが出来ていないことを見るとこのままで良いのか不安が残ります。

さらに、2020年冬春頃から蔓延してきた新型コロナウイルスの影響で試験が予定通り受けられなかったり、入国予定のはずが中止になってしまったなどのニュースも多く見られるので、どの分野でも見込み通りの人数を受け入れることができるのかどうか、先行きが心配な状況となっています。

また、次のグラフは平成24年から令和元年までの農業分野における外国人労働者数全体のグラフです。

全体的に総数は右肩上がりで平成24年から見ると令和元年では2倍以上に増加しています。主に増加しているのは技能実習生です。技能実習2号から特定技能へ移行することが出来るので、技能実習生が増えることも良い傾向であるといえます。(政府の見込み通りに特定技能生を増やしたいという観点でなら)

しかし、技能実習制度は特定技能に移行するための前段階という立ち位置ではなく、本国への技術等の移転が主な目的ですのでそのことには注意が必要です。

まとめ

・農業分野は人手不足が続いており高齢者の働き手が多いことから労働力の供給が必要
・特定技能・農業の対象は耕種農業と畜産農業でそれぞれに対して試験がある
・特定技能生は令和2年3月で686人と、5年通算の見込み人数36500人とは乖離がある。

以上、日本の農業分野の現状や、特定技能・農業についての取得条件や試験などについて解説させていただきました。

農業の分野はAIやロボット技術などを活用したスマート農業の実現も進んできていますが、やはり現段階ではまだまだ人手が必要なことは明らかなことだと考えられます。そのためにも、外国人労働者に関する特定技能や技能実習制度などについての理解を深めることは大きな意味があるのではないでしょうか。

そして、この記事を読んで特定技能や農業分野について理解を少しでも深めて頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。